船場センタービルに入居するネクタイ専門店はヴィンテージウォッチの宝庫だった。
ーー今日は、よろしくお願いします。[ネクタイのまるか]名前の通りネクタイ専門店と思いきや、中へ入るとヴィンテージウォッチがあって。これは気になるなぁ……と。
ありがたい話ですね。うちは船場センタービルができた当時からこの場所に入居していて。先代である父は、ネクタイをはじめとする紳士小物を扱う店を営んでいました。だから店名が[ネクタイのまるか]なんですよ。
ーー確かに、入り口付近にはズラッとネクタイが並んでいますね。
屋号にネクタイが入っていますからね。でも、ネクタイだけを売る、では商売として成り立たない時代ですからね。
ーーなるほど。ちなみに、ヴィンテージウォッチを扱うようになった経緯は?
今からだいたい30年くらい前ですかね。当時、30代前半の頃、1933年に誕生したロレックスの防水自動巻時計・バブルバックを手に入れたんですよ。これをキッカケに、ヴィンテージウォッチにハマってしまって。自分の趣味としてヴィンテージウォッチの収集を始めたんです。
ーーで、ある程度集まったタイミングで店に置き始めた……と。
そうですね。もともとは自分の趣味だったので店に並べると先代に話したときは反対されたんですよ。でも、先代から代替わりするとき「ネクタイだけではやっていけないかも」という漠然とした考えもあって。反対を押し切ってヴィンテージウォッチを並べることにしたんです。
ーー置き始めてからはどうでしたか?
最初はただのコレクターに毛が生えたようなものでしたから、不安もありました。でも、仕事を続ける上での一番の活力っていうのは「好きかどうか」だと思うんです。僕の場合は、ヴィンテージウォッチが好きで、愛情もあった。だから、もしも売れなかったとしても楽しくやれるっていう自信はあって。