祖父以来、船場で商売をしてきた家系。縁のある編集者から見た、船場。
ーーこの連載、人生の先輩に船場センタービルの魅力を教えていただくというものでして。今回はビル内を回りながらお話できればと思っておりまして……。
わかりました。今は、船場センタービルってあまり来る機会はないんですが、昔は取材で来ることも何度かありまして。あと、実は僕のルーツが船場の方にあるので、喋れる範囲で協力させていただきます。
ーーありがとうございます!ちなみにルーツというと?
祖父が、戦後に道修町で小さな製薬会社をはじめたんです。父のあと、今は兄が継いでるんですけどね。祖父がオシャレな人だったんで子どもの頃から旧い店に連れて行ってもらっていたんです。今日も丁度、神農さんと親しまれている医薬の神様を祀る[少彦名神社]のお祭りを見てきたところで。
ーーでは、割とちっちゃい頃からこの辺に来ていたんですね。
そう、原風景というか、親しみのある場所なんですよね。それから船場センタービルに行くようになったのは社会人になりたての頃。大学を卒業して入社したエルマガジン社がここから歩いて5分くらいの博労町にあって、船場センタービルが「逃れの地」だったんですよ。今は無くなってしまった[純喫茶 三輪]にはよく行きましたね
ーー船場=[純喫茶 三輪]っていうのは、よく聞きます。
大阪駅前ビルの[マヅラ]もそうですけど、[純喫茶 三輪]も高度経済成長期から万博、それ以降に続く、昭和の大阪を見つめてきた純喫茶の代表選手ですよね。実は、地元の天王寺にも全く同じスタイルの[田園]っていう喫茶店があって。そこにもよく通っていたんですが、何故か同じタイミングでどちらも閉店して……。個人的には大阪のミステリーですよ。
ーー(笑)
[自由軒]や[洋食ふくもと]、[南海飯店]にも通ってましたね。あと、10年以上前のMeets Regionalで船場を中心としたオフィス街の特集をしたことがあって。その時に船場センタービルと半径500mぐらいのエリアのページを作ったこともありました。当時編集部にいた溝口さんって先輩が、「船場界隈って旧い店も多いし、デッドストックやヴィンテージのアイテムがあったりするんちゃう?」って。
『MeetsRegional』201号『オフィス街の冒険』特集内の一部。
ーーまさに、船場をディグった……と。
扱ったのは長堀通・中央大通・堺筋・御堂筋の内側にあるエリアで「買い物パラダイス船場・丼池。サタデー・ヌーン・フィーバー」と題して、船場センタービルの中も取材しています。「船場的デューティーフリー」とか「おかんのアメ村」とか「元ポパイボーイ歓喜!」とか、少し笑えるキャッチをつけてアイテムと、街を掘るという企画だったんですが、なかなか面白かった。実際にヴィンテージのええもんがでてきたりして。それこそ、今も同じくええもんが眠っている店も多いんじゃないかな。
ーー確かに。これからは、お店に入ったら、デッドストックやヴィンテージ探ししてみます!
ぜひ。きっとええもんがディグれるはずです。