32歳で、突然のリストラ。縁があったこの場所でお店を。
ーー今日は、よろしくお願いします。早速ですが、どうして船場センタービルでお店を?
船場センタービルとの付き合いは40年近くになるんやけどね。もとは、雇われて紳士服の販売をしていたんですよ。でも32歳の頃に突然のリストラにあって。こりゃ、困った……と、頭を抱えていたんですね。そんな時に、知人に「ビル内の空き物件を紹介したろか?」って言われて。お金もなかったけど、僕には紳士服しかなかったんでね。1985年に無理をしてお店を持ったんです。
ーーバブルに入る少し前くらいですか。
まさに、その通り。景気の良さの後押しはもちろんやけど、この場所で紳士服の販売をしていたことが功を奏して。リストラにあったお店によく来てくれていた常連さんがウチへも足を運んでくれていたんですよね。それに、当時は今と違って舶来のエエもんを扱っているお店が少なかったこともあって、需要があったんですよね。
ーーなるほど。
当時は、この辺の地価はドンドン上がって、商売も繁盛する。でもね、そんなのは長く続きませんからね。バブルの崩壊と共に、その盛り上がりも鎮火していくわけですわ。そんなときも、常連さんのおかげで、山場を乗り越えられて。他のお店は閉店してしまった場所も多くてね。
この日は、新作スーツの棚卸し。J&Sでは、スーツのオーダーも可能。
ーーなんと……。ちなみに、3号館の1階でここより古いお店はあるんでしょうか?
うーん、うちの向かいは長いかな。あとは、インテリアの卸売を専門にされている秋月貿易さんくらいですかね。長年やっている店が多いってイメージがあると思うんやけどね、意外と入れ替わりが激しくて。昔は、1号館にボーリング場があったり、ゴルフのスクリーンがあったり……それこそ、遊べる場所も多かったんやけどね。
ーーJ&Sのラインナップは昔と変わらず、紳士服一本勝負ですよね。
基本的には変わらないけどね。クールビズが推奨されていることもあって、カジュアルな商品も増えました。僕はネクタイをビシッとシメるスタイルも好きなんでね。今でもネクタイは無くさず置いていますけどね。
レジの前には、ズラリと並ぶネクタイ。スーツスタイルのアクセントにもってこいな、ポップな柄が多い
ーー確かに。スーツを着る機会が減っていますよね。
そうなんですよね。でも、紳士服ってのはすごく素晴らしい衣服なんですよ。動きやすい上に洗練されていて。どこへ行っても恥ずかしい思いをすることもありませんしね。うちでは、オーダーもやっていて5万円からオリジナルスーツが仕立てられるんで、ぜひ若い子にも仕立てに来てもらいたい。絶対、紳士服の魅力にハマりますから。